エスペラント語は1887年にポーランドの眼科医ラザロ・ルドヴィコ・ザメンホフが創案した世界言語です。 ロマンス、ゲルマン諸国語から単語を取っており、文法も16カ条しかありません。それでいながら発音は美しく、表現の豊かな言語でもあります。また習得も難しいものではないようです。民間の間での交流に多く使われており、実用性が窺えるのですが、西欧圏の言語からの文法の採用が目立っており、英語・西欧語圏の人々の習得時の有利さは埋められないように感じます。
国を持たないユダヤ人が、円滑にコミュニケーションを図れるように共通の言語が必要と考え創案したそうです。また、世界が平和にやっていくにはある共通の言語が必要ではないかとも考えていたようです。
英語のアルファベットを多く利用しています。c^などの ^ は、本来は文字の上についているのですが、フォントの関係上後ろにつけることにします。
A(a):アー B(b):ボー C(c):ツォー C^(c^):チョー D(d):ドー E(e):エー F(f):フォー
G(g):ゴー G^(g^):ジョー H(h):ホー H^(h^):ッホー I(i):イー J(j):ヨー
J^(j^):ジョー K(k):コー L(l):ロー M(m):モー N(n):ノー O(o):オー P(p):ポー
R(r):ロー S(s):ソー S^(s^):ショー T(t):トー U(u):ウー U^(u^):ウォー V(v):ヴォー
Z(z):ゾー
ローマ字読みです。注意する読みは以下のとおりです。
また、アクセントは常に単語の後ろから2番目の母音につきます。
エスペラント語の冠詞は、定冠詞として"La"のみが存在します。名詞の性・数・格に関わらずLaのみを用います。
La domo estas branka.
(あの家は白い)
Mi ac^etas la domo.
(私はあの家を買います)
冠詞は特定のものにつきますが、つかない場合もあります。
[冠詞をつける場合]
[冠詞をつけない場合]
以下の場合には"la"を"l'"と省略してもよいことになっています。
名詞の語尾は-oと決まっています。複数を表す場合には"o"の後に-jをつけます。また、エスペラント語の名詞には、主格と対格しかありません。
主格、対格以外の格を表したい時は前置詞を用いることで表します。
文中では名詞語尾oを省略し、'とする場合もあります。
例) amik'
形容詞語尾は-aと決まっています。また、語尾は名詞の形によって変化させます。
この辺りはラテン語によく似ています。例えば2番目の例文のbrankan libronですが、libronは単数対格の名詞です。対格には-nをつける決まりになっていました。この語尾の変化にあわせて形容詞の語尾も変えます。
+--------+-----+-----+ | |単数 |複数 | +--------+-----+-----+ |I/me | mi | ni | +--------+-----+-----+ |you/you | vi | vi | +--------+-----+-----+ |he/they | li | | +--------+-----+ + |she/they| s^i | ili | +--------+-----+ + |it/they | g^i | | +--------+-----+-----+ |self | si | +--------+-----+-----+ |4人称 | oni | +--------+-----+-----+
名詞なので語尾変化があり、名詞と同じ変化をします。主格は原型、対格は-u、与格は前置詞al、奪格は前置詞perを使います。
人称代名詞の所属を表す場合には語尾に-aをつけて形容詞化させることで表します。
人称代名詞の再帰形は、主部を述部で表現する場合に使います。語尾変化は原型の語尾変化と同じです。siは3人称の主語でない場合にのみ用います。
4人称のoniは一般的な人を表すため、複数はなく、また主語としてのみに用います。
語尾は以下の通りです。
動詞の語尾は主語の性、数によって変化しません。
[直説法現在-asの用法]
[過去形-isの用法]
[未来形-osの用法]
[仮定法-usの用法]
[不定形-iの用法]
[命令形-uの用法]
副詞は動詞、形容詞、他の副詞を修飾する語です。副詞の語尾は-eであり、語尾には-jをつけません。
他の品詞にもなりうる語根に-eをつけて副詞化した副詞のことを派生副詞といいます。
nov-a:新しい → nov-e:新しく
語根だけで使う原型副詞もあり、それらを原型副詞といいます。
[時を示すもの]
[程度・比較を示すもの]
方向、場所を表す副詞に、対格語尾-nをつけると移動の方向を示します。長さ、重さ、値段などの数量を表すときにも名詞の対格を用います。日付、時間、度数、順序などを表すときは前置詞の代わりに名詞対格を用います。
副詞の比較形は形容詞にならいます。
Patrino agis pli vigle.
(母はより一層活発にふるまった。)
* patrino:母は
* agis :ふるまった
* pli :一層
* vigle :活発に
Li kuris plej rapide en sia klaso.
(彼は組で一番速く走った。)
* li :彼は
* kuris :走った
* plej :最も
* rapide:速く
* en :〜の中で
* sia :〜自身の
* klaso :クラス
前置詞は名詞や代名詞の主格の前に置かれます。それぞれの前置詞は独自の意味を持っています。
どの前置詞を使ってよいか判断し難い場合には、意味の決まってないjeを使います。また、jeの代わりに前置詞を省いて対格を用いることもできます。
S^i revenis je la deko horo.
(彼女は10時に戻ってきた)
* S^i :彼女は
* revenis :戻ってきた
* la :定冠詞
* deko horo:10時
Je la tangmezo ni malfermis la kunsidon.
(私たちは正午に集会を開いた)
* tangmezo :正午
* ni :私たちは
* malfermis :開いた
* kunsidon :集会を
S^i estas pli alta ol mi je 5cm.
(彼女は私より5cm背が高い)
* S^i :彼女は
* estas:〜である
* pli :比較級副詞
* alta :高い
* ol :比較
Mi malsanig^is je la stomako.
(私は胃をこわした)
* Mi :私は
* malsanig^is:悪くした
* stomako :胃
Li estas ric^a je la sperto.
(彼は経験に富んでいる)
* li :彼は
* estas :〜である
* ric^a :富んだ
* sperto:経験
否定にはneあるいはneniを用います。
否定したい語の直前に否定詞"ne"を置くことで否定文をつくります。文章全体を否定したい場合には動詞の前に置きます。
Ne Lazaro amas la katon.
(その猫を愛しているのはラザロではない)
Lazaro amas ne la katon.
(ラザロが愛しているのはその猫ではない)
* Lazaro:人の名前(主格)
* amas :愛している
* katon :猫を
すべてを打ち消すときには"neni-"を使います。英語のneverと同じような意味を持っています。
Neniam mi mensogis.
(私は一度も嘘を言ったことがない)
* neni-am :決して〜ない
* mi :私は
* mensogis:嘘をついた
Mi neniel povas kompreni, kion vi diras.
(あなたの言っていることが全く分かりません)
* neni-el :どうにも〜ない
* povas :〜できる
* kompreni:理解すること
* kion:
* diras :言っている
La parolanto havas nenion.
(演説者は何も持っていない)
* parolanto:演説者は
* havas :持っている
* neni-on :なんの物を〜ない
あれも、これも打ち消す場合には"ne〜,nek…"を用います。強調する場合には"nek〜,nek…"を使います。
比較級は副詞"pli"、最上級は副詞"plej"を形容詞の前に入れます。比較には接続詞"ol"を使います。
比較劣級は"malpli"を、比較最劣級は"malplej"を使います。
比較対象を前置詞"el"で、比較範囲を前置詞"en"で表します。
同等比較級は、相関副詞"tiel","kiel"や"tiom","kiom"で表します。
Li estas tiom forta, kiom mi.
(彼は私と同じくらい強い)
* li :彼は
* estas:〜である
* forta:強い
* mi :私は
[疑問詞]
Kio estas tio?
(なに?それ)
Kie estas la akceptejo?
(受付はどこですか?)
Kie estas la flughaveno?
(空港はどこ?)
疑問、関係、指示、不定、全般、否定の5つの代名詞、形容詞、副詞は意味、語形が似てるので、これらを一括して「相関詞」と呼びます。
+------+---------+---------+--------+-------------+ | |こと,もの|ひと,もの| 性質 | 所有 | | | -o | -u | -a | -es | +------+---------+---------+--------+-------------+ | 疑問 | 何 | どれ,誰 | どんな | 誰の | | ki- | kio | kiu | kia | kies | +------+---------+---------+--------+-------------+ | 指示 | それ |その人/物| そんな |その人の/物の| | ti- | tio | tiu | tia | ties | +------+---------+---------+--------+-------------+ | 不定 | あること| ある |ある種の| 誰かの | | i- | io | iou | ia | ies | +------+---------+---------+--------+-------------+ | 全般 | すべて | みんな |あらゆる| 各人の | | c^i- | c^io | c^iou | c^ia | c^ies | +------+---------+---------+--------+-------------+ | 否定 |何も |誰も |どんな |誰の | | |…ない |…ない |…もない|…もない | | neni-| nenio | neniu | nenia | nenies | +------+---------+---------+--------+-------------+ +------+---------+------------+----------+--------+---------+ | | ところ | 理由 | 様子 | 時 | 数量 | | | -e | -al | -el | -am | -om | +------+---------+------------+----------+--------+---------+ | 疑問 | どこに | なぜ |どんなに | いつ | いくつ | | ki- | kie | kial | kiel | kiam | kiom | +------+---------+------------+----------+--------+---------+ | 指示 | そこに | それだから |その様に |その時に|それだけ | | ti- | tie | tial | tiel | tiam | tiom | +------+---------+------------+----------+--------+---------+ | 不定 | どこかに|何かのわけで|どうかして| かつて | 幾らか | | i- | ie | ial | iel | iam | iom | +------+---------+------------+----------+--------+---------+ | 全般 | いたる所| どう見ても | 色々と | いつも |すっかり | | c^i- | c^ie | c^ial | c^iel | c^iam | c^iom | +------+---------+------------+----------+--------+---------+ | 否定 | どこにも|どうしても |どうにも |決して |少しも | | |…ない |…ない |…ない |…ない |…ない | | nei- | nenie | nenial | neniel | neniam | neniom | +------+---------+------------+----------+--------+---------+
疑問詞と関係詞は以下の3種に分類できます。
疑問代名詞は主語、補語、目的語になります。
[基本数詞]
10の位、100の位などは数詞をそのまま並べて表します。
0と100万以上の数は名詞形で表します。少数点には"punkto"を用います。
形容詞語尾-a、あるいは副詞語尾-eを基本数詞の後ろにつけて序数詞を表します。日付や時刻は序数詞で表します。
配分を表すには、前置詞"po"を使います。
Po du homoj el 5 urboj.
(5市から2人ずつ)
形容詞、あるいは副詞のように使いますが、動詞のように目的語、補語をとることができます。動詞の語幹に以下の接尾語をつけることで表現します。
[能動]
[受動]
能動分詞の全ての態は、"estiの任意の形+動詞の能動分詞"で作れます。動詞語幹につけた分詞接尾語の後ろに品詞語尾-a,-e,-oをつけて分詞形容詞、分詞副詞、分詞名詞を作れます。
分詞形容詞は動詞estiの現在形、未来形、過去形と組み合わせて時制を表します。分詞副詞の意味上の主語は、それがかかる文の主語と同一です。分詞名詞は普通、人を意味します。
受動分詞の全ての態は、"estiの任意の形+動詞の能動分詞"で作れます。受動の前置詞は"de"(〜によって)を使います。これは英語ではbyにあたります。