前提として、銃刀法にひっかからないようにすることを目的としており、その他の刑法については考慮外とさせていただきますが、危険物不等所持などを助長するものではありません。
また、犯罪に使おうとする人には、あまり意味のないテキストとなっております(理由は、一本ナイフを作ってみればわかります)。
以下に所持に関わる銃刀法についてを記載しておきます。以下に違反する物は作らないようおねがいします。所持ですから、作った時点で違法になります。 また、以下に接触しないナイフであっても常識的な長さ以内(だいたい40cm以内)で作成することをオススメしておきます。
刀剣類は所持が禁止されています。つまり、許可なく持っている時点で違法となります。刀剣類として定められているものは以下の通りです。
「許可無く刀剣類を所持する者は3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる」(第13条の4)。
(※1)刃渡りとは、刃の付けねから刃の先端までの長さです。付けねの位置が不鮮明な場合は全長から8センチを引いた長さです。
(※2)剣とはダガーのことです。また、刀とはそりがあり、つばのあるものです。45゜以上の角度に自動開刃する機能を有すものとは俗に言う「飛び出しナイフ」のことですが、これには例外があり、5.5cm以下かつ開刃を固定する装置を有さず、かつ刃先が直線で峰が丸みを持ち、刃先角が60度以上であれば除外されます。
(※ )刃物とは、鋼製(ステンレスなど合金を含む)の片刃または両刃の、人畜殺傷能力のある刀剣類以外のものです。
作業手順と簡単な内容を解説します。詳しい内容は以降の項目で行うこととします。このテキストでは初めての作成であり、休日趣味レベルでの作成を前提にしてありますので、以下の作業手順は一部省いる部分があります。
さて、このテキストを読んでいらっしゃる皆様はナイフを作るのは初めてのことと思います。 そこで作成の基礎的な部分を解説しておきます。
まず、ナイフの作成方法には大きく分けて二つの方法があります。
鍛造(たんぞう)は皆様のご想像の通り、鉄を熱してやわらかくして、それを打って形を整えていく製法です。この方法は習得が難しく、大掛かりな装置が必要となりますので休日趣味には向きません。 そこで個人(プロのカスタムナイフメーカーの多くも)は次の「ストックアンドリムーバル法」でナイフを作っていきます。
ストックアンドリムーバル法とは、鉄板を削りだしてナイフの形に仕上げる製法です。かのラブレス氏が世間に広め、今ではほとんどのカスタムナイフメーカーが採用している製法です。習得が簡単で失敗しにくく、鉄板とヤスリがあれば作成できることから休日趣味にも適しているといえます。
このテキストでもストックアンドリムーバル法を採用して作成解説を進めていくこととします。
まずナイフを作る場合デザインを考えます。デザインを決定するのにあたって重要なことは、「どういった時に使う」などといった要求をしっかりと分析し、その要求を反映させることです。このテキストではConcealability、つまり隠蔽性をテーマとしていますので、Concealabilityの要素には何が必要かを分析します。
個人的な観点が入りますが、私の考えるConcealabilityの必要要素は以下のとおりです。
これらを参考に各自デザインしていただければ幸いです。デザインを決定したら厚紙にデザインを写し、切り抜きます。これをパターンと言います。デザイン段階の注意点としては、全長14cm未満でハンドルを作らないことです。これは銃刀法の携帯に関わる法規のためです。
「何人も正当な理由無しに刃渡り6cm以上の刃物を携帯してはならない」
これはつまり、刃渡り6cm以下の刃物であれば正当な理由なしに持ち歩いても良いということです。ちなみに正当な理由とは、「業務で使う」や「キャンプの帰り」などです。護身用は正当な理由になりません。
14cm以下でハンドルをつけない理由は、刃渡りの算出方法を思い出してもらえれば分かる通り、ハンドルをつけないと刃の付け根が不鮮明になるので、刃渡りの算出式は"全長-8cm"となり、14cm-8cmで刃渡りは6cmになります。刃渡り6cm以下のナイフは理由なく持ち歩いてもよいので銃刀法を回避できます。
ここでは例として、ラペルダガーを紹介します。
参照:photo7 → http://scel.fc2web.com/figure/photo7.jpg
ラペルダガー(lapel dagger)はその名の示す通り、衣服のえりの裏に隠し持つためのナイフです。布製のシースに収められ、シースを縫いつけることで携帯します。親指と人差し指で握り、安定性を増すため、また取り落とさないように多くのものは後部にヒモがついています。
photo8は私の作ったラペルダガーです。シースは革製ですが、衣服のえりの裏に縫い付けられるようにしています。
参照:photo8 → http://scel.fc2web.com/figure/photo8.jpg
ナイフの材料のメインといえば何でしょうか。やっぱり鋼材ですね。まずは鋼材を入手しましょう。ここで鋼材について注意点があります。鋼材には炭素保有量によって焼きが入らないものがあります。ですので、道端に落ちてる鉄板やホームセンターで売ってる鉄板は焼きが入らず刃物には向きません。ナイフショップや刃物店には刃物用の鋼材が売られていますので、近くの刃物店で入手しましょう。購入には身分証明もいりませんので18歳未満の読者の方も安心して購入してください。近くに刃物店がない方は通信販売ができる刃物店を次に紹介しますので、そちらで鋼材を購入してください。
たくさんの種類の鋼材が売られていますね。鋼材は種類によって特徴があります。どれにするか迷ったら、ATS-34を選ぶことをオススメします。それぞれの鋼材の特徴は次のとおりです。
基本としてATS-34をオススメしますが、加工性を追及するならCROMO-7を選択するのも一案です。 サイズはデザインしたパターンに合うサイズのものを選びましょう。厚さについては3mmから4mmのものを購入しましょう(理由は後述します)。
後はホームセンターに行ってステンレス用のヤスリと万力、金鋸(金属切断用ノコギリ)を購入しましょう。
ケガキをしましょう。ケガキとは材料にパターンに合わせた線を引くことです。まずは鋼材を油性マジックで黒く塗りましょう。これはケガキ線を見やすくするためです。これにパターンを乗せ、周りをカッターナイフでなぞります。
次は穴空けです。最低でも3mm以上の穴をハンドル後方にひとつ空ける必要があります。これは、熱処理時にこの穴に針金を通し、吊り下げて処理するためです。穴がないと吊り下げられないため処理ができないのです。しかし、鋼材への穴空けは思いのほか難しい作業です。ボール盤という穴空け専用機を用いなければほぼ不可能でしょう。近くのホームセンターで交渉して、どうにか穴を空けてくだい。本来はケガキ線の周りに3mmの穴を空けていくのですが、厚さ3mm程度の鋼材でしたら金鋸とヤスリでどうにかなるでしょう。3mm前後の厚さの鋼材を購入してもらった理由はここです。
ケガキ線に沿って金鋸で切り取っていきますが、金鋸は直線的にしか切り取れないのでおおまかに切り取ります。切り取るときのコツは、万力でしっかり固定することです。また、押すときに力を入れます。
切り取った後は全くケガキ線に沿っていないでしょうから、ヤスリでケガキ線に整えます。この部分はとにかく根気です。無心でやりましょう。コツはここでも万力でしっかり固定することです。また、押すときに力を入れます。
ラペルダガーは片刃ですので、このまま反対側まで斜めに削れば良いのですが、ここでもひとつ注意点があります。刃の削り出しをする際、この時点では刃に0.2mmの削り残しを残しておきます(すいません、わけ分からないですね)。これは初めて作ったとき私も見落としていた点なのですが、熱処理に出す前にトマトが切れるくらいに鋭くしてしまうと、熱処理時に歪が出やすいようなのです。
ですので熱処理前は刃を0.2mm前後削り残しておき、熱処理から戻ってきてから砥石で鋭く磨き上げるのです。なお、両刃で作る場合はセンターラインを引いてそこから左右に0.1mmづつ削り残します。0.1mmとか0.2mmなんて定規なんかでは計れません。ですのでこれは勘でいいです。大切なのは0.2mm以上であっても途中で薄さが変わってないことです。
参照:figure24 → http://scel.fc2web.com/figure/figure24.GIF
熱処理は主に焼入れと焼きなましを行います。焼入れとは鋼材を高温に熱し、油や水で一気に冷やすことで硬度を上げる技術です。硬度を上げることで切れ味は良くなりますが、脆くなり刃欠けしやすくなります。刃欠けしやすいのは刃物に向かないので、焼きなましを行なって粘り強くします。焼きなましは鋼材を高温に熱し、灰の中などでゆっくり冷やすことで行ないます。
これら一連の処理は個人で行なえるほど低い技術ではありませんので、業者に頼みましょう。「材料の入手」で紹介した通信販売業者は熱処理も行なっていますので、そちらで熱処理を済ませてください。熱処理はおよそ2週間かかります。
本来はこの後ハンドルを作るのですが、このテキストでは省略します。
熱処理から戻ってきたナイフは酸化皮膜に覆われていますので、サンドペーパーで奇麗に磨いておきましょう。後は砥石かダイヤモンドヤスリで刃をつけます。
ナイフの性能評価要素のひとつにシースがあります。シースひとつでナイフの使いやすさに大きく影響します。シースにはさまざまな素材が使われていますが、主要なものは次に表すとおりです。
このテキストではラペルダガーをデザインしましたので、布製のシースを作っていくことにしましょう。デニムなどの厚めの生地をダガーより少し大きめに切り抜きます。このとき、同じサイズのものを2枚切り抜いておきます。ダガーを真ん中において、2枚の生地で挟んでそのまま縫い合わせます。少しきつめ位に縫い合わせておきます。後はあまった部分を切り取るわけですが、ラペルダガーは衣服のえりの裏に縫い付けますので、縫いしろがないと縫い付けられませんね。それを考慮して縫いしろを適当に設けておきます。
他の素材の加工についてはまたの機会に・・・。
今まではサイズによって銃刀法を回避してきましたが、もっと根本的に銃刀法を回避する方法が存在します。銃刀法の規制対象は刃物です。ここで刃物の定義を思い出してください。金属製であるということが定義されていますね。つまり、金属以外の素材でナイフを作れば銃刀法に触れることがないわけです。ここでナイフに使えそうな金属以外の素材を挙げて見ましょう。
非常に丈夫で、金属製ナイフと変わらないぐらいの貫通力を持っています(もちろん切れませんが)。金属探知機に検出されないため、飛行機内持ち込みもできる可能性があります。3000円前後で売られています。
ホームセンターで売られています。丈夫さに欠けるため9mm前後で作成しないと使い物にはならないと思われます。かなり安いのが強みです。
ガラス製ナイフは主に暗殺用ナイフとして知られています。切れ味は良いですが、割れやすく、何度も使うのには向きませんし、加工も難しいでしょう。
少し高価な素材です。鋼より軽く鋼より強いです。昔は金属探知機に検出されませんでしたが、今では内部の炭素を検出する機器が増えていますので検出されます。
グラスファイバー素材です。カーボンファイバーのような特徴を持ちますが、比較的安価です。しかし強度面ではあまり信頼が置けません。また、G-10は体内に入ると猛毒ですので加工には十分注意してください。
簡単に言うと丈夫な焼き物です。十分に強度を持ち非常に硬い。切れ味も良いですが、とんでもなく高価で個人での加工は不可能です。ファインセラミック自体は飛行機内持込も可能ですが、製品にはアルミチップがインサートされているため、検出されます。
このぐらいでしょうか。ガラスとファインセラミック以外は切る用途には使えませんね。どちらの素材も個人で加工できるものではありませんので、実質的には金属以外の自作ナイフは突き刺す用途でしか用いられないと考えていただいていいと思います。
最後の問題となってくるのは、どこに携帯するかということです。使いたいときにすぐ使えることが重要となってくるコンシールドナイフでは、携帯する場所でも性能が大きく変わってしまいます。代表的な場所は次のとおりです。
隠し場所には靴のソールの下や、ベルトのバックルなどもありますが、これらは特殊なナイフでの場合ですので除外します。
T字型のドライバを削って尖らせることでプッシュダガーのように使うことができます。ドライバの金属はなまくらですが、1戦闘ぐらいなら耐えられると思います。T字型ドライバは1本500円前後ですので経済的です。プロの方はナイフを仕事場に残してくるのが通論とされていますので強い味方かもしれません。
参照:photo9 → http://scel.fc2web.com/figure/photo9.jpg
実際にナイフを作ってみた方々、どうだったでしょうか。予想以上に辛かったのではないでしょうか。おそらく犯罪に使うだけなら包丁買ってきたほうがマシだと思われたことと思います。そのぐらいきつい作業です。
また、ナイフでの外傷は傷内部に微粒な金属粉が付着し、ここから凶器になったナイフの個体まで特定されてしまいます。自作ナイフですと作成にかかわった物質全てを破棄しなければ証拠が残ってしまいますので、あまり現実的ではありません。
また、このテキストの通り作成すれば銃刀法を回避することはできるかもしれませんが、携帯には軽犯罪法の危険物不法携帯に該当しますので、携帯時には注意するようオススメします。